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気になる定年後はフリーランスで働く そのメリットとデメリットは?

小川 純小川 純

2020/01/26

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イメージ/©︎123RF

84%の人が、定年後は再雇用を選択

「人生100年」時代といわれようになってから、定年後の働き方についてさまざまな論議がされている。

老齢基礎年金(国民年金)の支給はすでに65歳からになっているが、厚生年金の支給年齢も昭和36年4月2日以降生まれ、つまり2020年に59歳になる人からは、支給年齢が完全前に65歳以降になる。言い換えれば「年金支給年齢が完全に65歳になったので、じゃあ次ね」ということで、さらに支給年齢を引き下げようと、論議が本格化、具体的な動きが出てきたというわけ。

日本経済新聞が行った郵送世論調査によると、「70歳以上まで働くつもり」と考えている人は37%になるという(1月11日付け朝刊)。年金の支給年齢引き下げは既定路線になっており、議論は次のステップに移っているのだ。

とはいえ、この調査の詳細を見ていくと、だれもが、働くことに対して積極的かというと一概にそうともいえないようだ。いつまで働くかの問いに「75歳以上」と回答したのは16%、「70~74歳まで」と答えた人は21%で、全年代で70歳以上まで働こうと考えている人は37%になるわけ。

しかし、年代別の回答を見るとちょっと違う傾向が見えてくる。70代で「70歳以上まで働くつもり」と答えた人は45%、60歳代は54%、30~50歳代は3割前後、18~29歳は18%と若い人ほど低くなっている。

いわば現実が近づいてくるほど、その傾向が高くなる。まあ、若い人ほどまだまだ働くのかと考えると、げっそりしてしまう気持ちも理解できるわけだが。

もちろん、高齢者のなかには働きたいから働くという人もいるだろうが、老後の生活を維持する、あるいは老後の不安から働く、働かざるを得ないからという人も多い。実際、同調査でも、「老後に不安を感じている」と答えた人が76%で、これが働く本音なのだろう。

次ページ ▶︎ | 収入は少しでも増やしたい

70歳を超えてまで働くかどうかはともかく、少しでも長く働くのであれば、収入を少しでも増やしたいものである。

現状の60歳の定年後の働き方としては、同じ会社に再雇用される人がもっとも多く、厚生労働省が行った平成30年の「高年齢者の雇用状況」によると、雇用継続を希望しなかった人が15.4%なのに対し、84.4%の人が雇用継続されており、60歳以降も同じ会社でそのまま働くという人が圧倒的に多くなっている。

定年後に広がるフィールド

とはいえ、再雇用されたとはいっても、給与が減額する人がほとんど。そこで働きながら年金を受給し、収入減を補うのが「在職老齢年金制度」というものだ。しかし、この制度には見落としてはいけないポイントがある。

それは60~64歳の人が定年後も継続して勤務、もしくは再就職し、週30時間以上勤務し、厚生年金に加入した場合、年金と給与の合計金額が28万円(支給停止調整額)、65歳以上では47万円を超えると、年金の一部がカットされるということである。この制度については内閣府において見直しの論議が進められており、現状でわかっていることは、60歳以上も継続されて雇用され、47万円以上の給与を受け取れば年金の一部がカットされるということだ。

仕事をして、これまで自分が払ってきた年金がカットされるというのは、どうも納得ができない。あるいはもっとバリバリ働きたいという人は、社員として働くのではなく、フリーランスとして働くということも考えてみたい。その形態としてはいろいろあるが、一般的なものでは個人として会社と業務契約を結ぶという方法がある。

次ページ ▶︎ | フリーランスのメリット 

フリーランスのメリットは、在職老齢年金は厚生年金加入者が対象になるためフリーランスとして働く場合、どんなに稼ぎがあっても年金はカットにならないということ。また、自営業として毎年、確定申告をすることになるので、業務な必要なものは経費として控除の対象になる。たとえば、仕事でつかった交通費や携帯電話、自宅で仕事をするなどしている場合は光熱費なども生活費と按分して必要経費とすることができる。

また、フリーランスでは厚生年金が外れるため、厚生年金の負担がなくなる。もし、老後資金が不安であれば掛金が全額所得控除できる「小規模企業共済制度」の活用も可能だ。

また、60歳未満の配偶者の国民年金保険料が増えることになるが、これは再雇用されても同じで、60歳以降は60歳未満の配偶者を扶養にしても、国民年金保険料の負担が生じる。ただ、保険料を負担した場合は、社会保険控除になる。

一方、健康保険は国民健康保険料になり、その負担はあるが、これも金額が一方的に決められる社会保険と違って、確定申告などをしっかりやることで負担を軽減することが可能だ。逆に、65歳以降も年金に頼らずやっていけるのであれば、「年金の繰り下げ受給」を行い年金を増やすという方法もある。

もちろん、メリットの裏にはデメリットも。それは会社とは雇用関係でなくなるので、いつ切られるという不安定さだ。しかし、これも会社との交渉で、しっかりとした契約を結ぶことである程度は回避可能なはず。また、契約が継続されるかは、仕事の結果次第になるはずだ。このあたりはまさにビジネスパーソンとしての腕の見せどころではないだろうか。
むしろ、こうしたデメリットは仕事へのモチベーションにもつながるのではないか。また、フリーランスなのだから、スキルさえあれば1つの会社に縛られることなく、さまざまな会社の仕事を請け負うことも可能になる。

要は、考え方次第。定年後、仕事がなくなると思うのではなく、フィールドが広がると考えれば老後の不安も解消するのではないだろうか。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。

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